「古民家リノベーション」ということばを聞いたことがありますか?
朽ち果てかけている空き家を、古き良き日本家屋の雰囲気やデザインと現代の最新設備が融合した、住みよい家に生まれ変わらせる術です。
最近注目を浴びている空き家再生の形のひとつですが、メリットもデメリットももちろん存在します。古民家リノベーションに憧れている、どんな住み心地なのかもっと詳しく知りたい、そんな方は、今回の記事をぜひ参考にしてみてください。
古民家リノベーションとは
「古民家」とはどんな家?
一般社団法人全国古民家再生協会というところが掲げている「古民家」の定義とは、「昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた『伝統的建造物の住宅』すなわち伝統構法」で建てられた家、となっています。
つまり、築後約70年以上の住宅は「古民家」と呼ばれるものだということですね。
伝統構法とは、要するに日本の伝統的な建築工法のこと。1番の特徴は「基本的に木材しか使わない」というところです。接合部に金物を使わず、柱を立てるときも筋かいや土台を使いません。
柱は壁に覆われず、梁も外に現れた状態になるため、構造自体が家のデザインそのものとなります。木材が剥き出しなので、湿気がたまらず、腐りにくいので劣化しづらいという長所もあります。
地域的な細かい差はありますが、夏の暑い日差しを遮ったり、料理の際の煙を逃したりという、日本の風土にあった機能的な特徴をたくさん備えています。
同時にそれが、現代で見ると「懐かしい」「安心する」「デザイン性も魅力的」となっているのです。
古民家リノベーションのいいところ
古い家と現代風の家のいいところ取りができる
古い家は、故郷や過ぎ去った昔を懐かしむ気持ちになれる、ほっとする瞬間を生み出してくれます。
古い家独特の色みや質感、高い天井、土間や縁側…古民家の空間が醸し出す雰囲気は、まさに「古き良き日本」のイメージそのものかもしれません。そういった趣に憧れる人には、理想的な住まいと言えるでしょう。
もちろん、間取りが使いづらかったり、こまごまとした部分が現代の生活にマッチしていなかったりということもたくさん考えられますが、そこは最新の設備を備えるとともに使い勝手の良いものに生まれ変わらせることができます。
まさに、古いものと新しいもののいいところ取りができるのが、古民家リノベーションなのです。
強度が高く、貴重
ヒノキやケヤキといった立派な建材は、強度が落ちるまで800〜1200年ともいわれていて、しかも今ではもう入手が困難。そういったしっかりとした歴史ある建材が柱や梁に使われているということは、強度が高いうえに大変貴重であり、それだけでも十分価値を感じられる部分でもあります。
身体や環境に優しい
古民家には、シックハウス症候群やアトピー性皮膚炎を引き起こすような建材が使われていません。身体に優しく、また自然になじんで環境にも優しい家なのです。
古い家が、雰囲気やデザインのためだけでなく、なんとなく落ち着いた気分にさせてくれるのも、そこに理由があるのかもしれませんね。
固定資産税が安い・補助が多い
固定資産税は、建物の新築時がもっとも高く、築年数が進むにつれて安くなっていきます。つまり、築70年以上経っている古民家は固定資産税の観点からいうと資産価値が相当低いため、税額もかなり安くなるのです。
また、耐震化や断熱化など、古民家には欠かせない改修工事を行う際には、補助金などの助成制度が充実しているという面もあります。
快適に住めるようにするにはそれなりに規模の大きなリノベーション工事が必要となる古民家ですが、その分補助制度をできるだけ活用していきましょう。
古民家リノベーションの注意ポイント
耐震化・断熱化に力を入れよう
古民家が建てられた当時は、耐震性の基準などが定められておらず、また「夏を涼しく快適に過ごす」ということに重点が置かれた住まい造りがされていたため、現代の住宅に比べて耐震性・断熱性が足りていないことがほとんどです。
建材は丈夫で強いものが使われているとはいえ、これらについては現代においても対応していけるよう、しっかり補強していかなければなりません。
バリアフリー化にも力を入れよう
古い住宅には、非常に高い段差があるのを見かけませんか?
建てられた当時、やはりバリアフリーの概念もなかったせいもあり、この段差をそのままにしておくと、年をとってからの生活に苦労する恐れがあります。
長く住むつもりなら、バリアフリーのリノベーションも視野に入れておきましょう。
工事に時間がかかる
リノベーション工事は、「建築当時の図面が残っていない・工事の途中で予想以上の腐食や損壊が見つかった」などの理由で、工事前の建物調査にも工事自体にも、時間が多くかかりがちです。
現代ではほとんど見かけない貴重な建材が使われている、梁が太すぎるなどで、施工に時間がかかるということも考えられます。
こういった事情から、通常のリフォーム・リノベーション工事よりも時間がかかるであろうことは知っておくようにしましょう。
古民家リノベーションの費用目安
老朽化部分の修繕、間取りの大幅変更、最新設備の導入、耐震化・断熱化…古民家のリノベーションは高額になるイメージがあります。
簡単なデザイン変更と、住みよい生活のための修繕・改修だけであれば1,000万円までの予算でも十分対応できますが、古民家に住むことのこだわりをこだわり抜いて建物全体の大掛かりなリノベーションを行いたいということであれば、数千万円レベルの工事にもなりえます。
そのため、費用目安は一概には言えません。施主の希望によって、本当に上下の幅があるといえます。
耐震化の費用目安
前述した通り、古民家が建てられた当時は耐震性という概念がほとんどなかったため、耐震化は必須です。
耐震工事もピンからキリまでありますが、補強金具を取り付ける程度の工事であれば、25~50万円くらいの予算でも施工可能なので、優先的に考えてみましょう。
断熱化の費用目安
こちらも古民家には欠かせないリフォームポイントです。
建物全体の断熱が必要ないのであれば、そこまで費用は高くなりません。窓サッシの交換や内窓増設程度であれば、8~15万円見ておけばよいでしょう。
外壁・屋根の費用目安
老朽化の程度によっては、外壁や屋根の修繕が塗装だけでは済まず、全面的な貼り替えや葺き替えになることもあります。その場合は150~300万円以上かかることもあります。
水まわりの費用目安
トイレ・浴室・キッチンは、古民家の建築当時の時代と今では圧倒的に設備機能に差があります。ここもしっかり取り替えておかないと、生活の根幹が不便で仕方ないと感じるかもしれません。
キッチンで150万円、トイレ・浴室・洗面所で300万円予算があれば、最新設備で快適に生まれ変わります。なかなか費用がかかる部分です。
間取り変更の費用目安
間取りの変更も、規模によって金額の幅が大きい部分です。簡単なものであれば数十万円から可能ですが、大規模なものであれば数百万円見ておかなければならないでしょう。
古民家リノベーションで使える補助金
空き家問題の深刻化から、全国各地で空き家解体やリフォーム補助金を用意する自治体が増えています。
さまざまな要件の補助金がありますが、中には古民家リノベーションに特化した補助金も存在します。特に「田舎暮らし」を推奨・歓迎している自治体では多く見られる傾向があります。
古民家のみとまでいかなくても、耐震・省エネ・バリアフリーのリフォームに使える補助金などもあるので、利用できるものはどんどん利用していきましょう。
まとめ
・古き良き日本家屋の雰囲気を残したまま、最新設備を備えた住みよい家をかなえるのが、古民家リノベーションである
・丈夫で歴史のある、今では手に入らない貴重な建材で造られた古民家は、耐震性や断熱性に欠けている・リノベーションに時間がかかるなどの注意点もあるが、魅力にあふれている
・費用は高額になる傾向にあるが、補助制度は充実しているので、積極的に活用したい